神戸地方裁判所 昭和47年(ワ)149号 判決
主文
原告の被告らに対する請求はいずれも棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実
第一 当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
被告中村は原告に対し、別紙第二目録記載の建物を収去して別紙第一目録記載の土地を明渡せ。
被告石田は原告に対し、右建物より退去して右土地を明渡せ。
二 請求の趣旨に対する答弁
主文同旨
第二 当事者の主張
一 請求原因
1 原告は、別紙第一目録記載の土地を所有している。
2 被告中村は別紙第二目録記載の建物を所有し、その敷地である右土地を占有し、被告石田は右建物に居住して右土地を占有している。
3 よつて原告は、被告中村に対し右建物を収去して右土地を明渡すことを求め、被告石田に対し右建物を退去して右土地を明渡すことを求める。
二 請求原因に対する認否
1 請求原因1の事実は否認する。
前記土地につき、昭和四一年六月七日売買を原因とする訴外遠藤〓夫から原告への所有権移転登記があるが、右移転登記は虚偽仮装のものであり、原告は右土地の真実の所有者ではない。
2 請求原因2の事実は認める。
三 抗弁
仮に、原告が前記土地の所有者であるとしても、次のとおり被告は右土地につき法定地上権を有する。
1 昭和三三年三月二二日、当時の前記建物の所有者訴外成井武雄は右建物に訴外兵庫県信用保証協会のために第一順位の根抵当権を設定し、同月二七日所轄法務局受付を以て右根抵当権設定登記を経由したが、当時前記土地は大蔵省の所有であつた。
2 訴外成井は、同年八月二九日に右土地を大蔵省から買い受けてから、昭和四〇年七月六日訴外遠藤〓夫に売り渡すまでの間右土地を所有していた。もつとも昭和三六年一月二六日所轄法務局受付を以て訴外成井から訴外高木郷太郎へ同日売買を原因とする右土地の所有権移転登記が経由されているが、真実売買がなされたものではなく、成井が同人の名義を一時借用してその所有名義にしたに過ぎない。
3 訴外成井は、右所有期間内に前記建物に、(イ)昭和三三年一一月二一日所轄法務局受付を以て訴外三笠無線電機合資会社のために第二順位の、(ロ)昭和三四年七月二二日所轄法務局受付を以て訴外兵庫県信用保証協会のために第三順位の、(ハ)昭和三八年一一月四日所轄法務局受付を以て訴外南勝のために第四順位の各その頃設定の各根抵当権設定登記を経由した。
4 昭和四〇年一二月一〇日、兵庫県信用保証協会の申立による前記建物に対する第一順位の根抵当権が実行され被告中村が右土地を競落した。
5 右のように建物及びその敷地が同一人の所有に属する前に同建物につき設定された抵当権と、建物及びその敷地が同一人の所有に属した後に地上建物に設定された抵当権とが併存する場合においては、たとえ前者による競売の申立により該建物が競落された場合でも、競落人たる被告はその敷地につき民法第三八八条による法定地上権を取得する。
四 抗弁に対する認否及び主張
1 抗弁1の事実は認める。
2 同2の事実は否認する。
大蔵省から訴外成井への登記原因は昭和三三年八月二九日払下げとなつているが、同訴外人は昭和三六年一月二六日まで土地代金を支払わなかつたため、それまで同土地の所有権は大蔵省に留保されていたのであり、同日を以て同土地の所有権は同訴外人に移転され、同日所轄法務局受付を以て右移転登記が経由された。しかるところ、同訴外人は同月二六日に右土地を高木郷太郎に売り渡し、同日所轄法務局受付を以て右移転登記が経由された。
従つて、前記建物に被告主張の各抵当権が設定された時はいずれも前記建物と前記土地の所有者を異にしていた。
3 なお、実際は、土地と地上建物の所有者が同一である場合でも、建物に対する抵当権設定当時その敷地の土地が登記簿上右抵当権設定者の所有名義になつていないときは法定地上権は成立しない。
第三 証拠(省略)
(別紙)
第一目録
神戸市〓区篠原本町五丁目一四番地の三
宅地 二五坪三五(八三・八〇一六平方米)
第二目録
神戸市〓区篠原本町五丁目一四番地の三
家屋番号 同所三四番の二
木造瓦葺二階建居宅
一階 一四・五九坪(四八・二一一平方米)
二階 一二・八四坪(四二・四四六二平方米)